福岡高等裁判所 昭和46年(う)157号 判決 1971年8月20日
本籍
北九州市小倉区大字富野一〇四二番地の八
住居
大分県日田市玉川町六六九番地の一
会社役員
間瀬四郎
昭和五年三月二日生
本籍
名古屋市瑞穂区船原町三丁目八番地
住居
大分県日田市三本松一丁目一三番二六号
間瀬五郎
昭和一〇年八月一〇日生
右の者らに対する所得税法違反被告事件について、昭和四六年二月二日大分地方裁判所が言渡した判決に対し、右両名の原審弁護人米田太市から控訴の申立があつたので、当裁判所は次のとおり判決する。
主文
本件各控訴を棄却する。
当審における訴訟費用はその二分の一ずつを被告人らに負担させる。
理由
弁護人中園勝人が陳述した控訴趣意は、記録に編綴の同弁護人提出の控訴趣意書に記載のとおりであるから、これを引用する。
同控訴趣意について。
所論は、要するに、原判決の刑の量定は重すぎて不当である。
よつて記録に基づいて検討するに、本件は、パチンコ遊技場を共同経営する被告人らが、昭和三九年分および四〇年分の所得税の確定申告をするに際し、それぞれ共謀のうえ、所得税をまぬかれる目的で虚偽過少の申告をして所得税をまぬかれたものであつて、右二年分の逋脱税額の合計は、被告人四郎の分が約一二七〇万円、被告人五郎の分が約八七〇万円の各多額に達していることに照らすと、被告人らが本件発覚後、右逋脱税額ならびに重加算税、延滞税の支払いを了していることなど、所論の被告人らに利益な事情を十分に参酌しても、原判決の被告人らに対する刑の量定はいずれもやむを得ないものであつて、これを不当とすべき事由を発見することができないので、論旨は理由がない。
よつて刑事訴訟法三九六条により本件各控訴を棄却し、当審における訴訟費用は同法一八一条一項本文によりその二分の一ずつを被告人らに負担させることとし、主文のとおり判決する。
検察官 山本新出席
(裁判長裁判官 木下春雄 裁判官 緒方誠哉 裁判官 池田久次)
昭和四六年(う)第一五七号(二)
控訴趣意書
被告人 間瀬四郎
同 間瀬五郎
右両名に対する所得税法違反被告事件につき左記のとおり控訴の趣意を明らかにする。
昭和四六年六月二一日
右弁護人 中園勝人
福岡高等裁判所第二刑事部 御中
記
原判決の刑の量定は重きにすぎ不当であるので破棄せらるべきである。
(1) 公訴事実については、被告人両名とも当初から素直に自白し、心から悔悛しております。
(2) 本件以後、法人組織にし、正確なガラス張りの経理をなしているので、この点からも将来二度と同種の事犯を繰返す余地はないと思われる。
(3) 被告人両名は、本件が発覚してから直ちに逋脱税額を納付したほか、これに匹敵する程の重加算税、延滞税等を支払つており、被告人等に対する懲戒の目的はこれで十分すぎるほど果されている。
(4) 如何に犯意を共通にしたとは言え、被告人等の意図した各自の逋脱税額自体に大きな差異がある以上、両名に対する科刑が全く同一であることは公平を失する。
以上の諸点を考慮され、原判決を破棄の上、軽い刑、特に罰金刑につき減額された刑を科されるのが相当であると信ずる。
(5) 尚重加算税は両名で計七五三万九、六〇〇円であります。